ユーモアにペーソスが交じる会津なまりの「恒三節」は、聞く人のほおをいつも緩ませた。 　ささくれ立った「永田町」に潤いをもたらし、市井の人々に政治への親しみを抱かせる特異な存在だった。 　2006年3月、偽メール問題で痛手を負った民主党の国対委員長に73歳で起用された。衆院副議長経験者の国対委員長就任は異例。あいさつ回りで足を運んだ中曽根康弘元首相からは、自民党が内紛を繰り広げた前年の郵政政局も念頭に「カラカラに乾いて干からびた政界に、笑いと水分が復活する」とエールを送られた。 　民主党国対委員長時代は、川端達夫、平野博文両氏を代理に従え、「助さん、格さん」と命名。「平成の水戸黄門」の異名が浸透し、「印籠」をかざすパフォーマンスが受けたこともあって、偽メール問題で沈んだ党の雰囲気は徐々に変わっていった。窮地を脱した民主党は、09年に政権を獲得。その立役者の一人と言っても過言ではないだろう。 　早大雄弁会時代から二大政党制が持論で、民主党政権誕生時には「死んでも悔いはない」とよく周囲に話していた。しかし、政権はわずか3年余りで瓦解（がかい）。政界引退後の18年5月に福島県郡山市で開かれた国民民主党県連結成大会では「もういっぺん民主党政権ができた、もう日本の二大政党制は動かない、というところを見届けないと死ぬに死にきれない」と声を張り上げた。 　国会議員としての歩みは、小沢一郎氏との関係を抜きに語れない。 　1969年の衆院選初当選組で、ともに自民党田中派に所属。「いっちゃん」「なべさん」と呼び合う濃い関係を築き、田中角栄、竹下登両元首相を支えた。 　竹下氏がつくった創政会にも一緒に加わり、小沢、羽田孜、橋本龍太郎、小渕恵三、梶山静六、奥田敬和各氏とともに竹下派七奉行と呼ばれた。